1. 身体の基礎知識 〜免疫力、新陳代謝、自律神経〜

1] 身体活動と基礎代謝

 身体活動は安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費するすべての体の動きとして捉えられます。安静時、生命維持に必要な体温保持・呼吸・循環などに必要なエネルギー量は基礎代謝と呼ばれ、成人で1,200~1,400 kcal/日程度。一方、身体活動は家事・通勤などを含む非常に幅広いものとされています。

 基礎疾患を持たない方でも、10年くらいの時間的経過によって身体活動能が低いと、寿命が短いことが示唆されています。軽度の身体活動(レジャー活動程度)でも、長寿の遺伝子とされる染色体末端部分のテロメアの長さが長くなるとされており、身体活動の寿命への影響は多岐にわたっているため、適切な運動が健康維持のために推奨されているのです。

2] 身体の器官とその役割

器官(臓器)は、特定の機能を果たすように、複数の組織が組み合わされてできたものです。

器官系を機能によって大きく分類すると、

①    栄養素や酸素の摂取と供給に関与する器官系(消化器系、呼吸器系、循環器系)

②    老廃物・余剰物の排出に関与する器官系(腎・泌尿器系)

③    生命活動とその維持に関与する器官系(感覚器系、運動器系、神経系,免疫系、生殖器系、内分泌系)

の3つに区分されます。

3] アレルギー反応

 病原性の細菌、ウイルス、様々なタンパク質や多糖類が生体内に侵入すると自己以外の異物(抗原)を認識して排除、または無毒化します。この仕組みを免疫といいます。

 生体にとって非常に大事な免疫反応ですが、免疫反応によって障害を受ける場合があります。これをアレルギーと呼び、アレルギーを発症する物質をアレルゲンといいます。接触経路によって、吸収アレルゲン(花粉、ダニ、カビ、ペットの毛など)、食物アレルゲン(牛乳、卵、蕎麦など)、薬剤、刺咬性アレルゲン(蜂などの毒素)、接触アレルゲン(金属など)に分類されます。

 例えば、食物アレルギーは、食物として傾向的に摂取された抗原(アレルゲン)に対する過剰な免疫反応によって起こります。アレルゲンとしては、卵、牛乳、小麦、米、そば、大豆などがあげられます。

4] 自律神経

 神経系は中枢神経系と末梢神経系に分けられます。

 中枢神経系は、脳(大脳・間脳・中脳・橋・小脳・延髄)と脊髄からなります。

 脳からは12対の末梢神経(脳神経)の線維が、脊髄からは31対の末梢神経(脊髄神経)の線維が出入りしています。

 感覚の信号を末梢から中枢に伝える末梢神経を「感覚神経」、筋を動かす信号を中枢から末梢に伝える末梢神経を「運動神経」と呼び、あわせて体性神経と呼ばれます。

 体性神経は外界の刺激に対して応答するための神経系です。

 一方、内臓に働く末梢神経は自律神経と呼ばれ、交感神経と副交感神経からなります。

◉交感神経

交感神経の末端からは伝達物質としてノルアドレナリンが分泌され、標的器官に作用します。その結果、心臓に対しては心拍数の増加、拍出量の増加など、心臓機能を促進します。呼吸器系に対しても促進的に働き、気管支を拡張させます。

一方、交感神経は消化管の平滑筋を弛緩させ、消化液の分泌を抑制するので、消化・吸収機能は低下します。

また、瞳孔を散大させ、汗腺の分泌を促進し、立毛筋を収縮させます。

以上のように、交感神経系は血圧上昇、骨格筋への血流増加など、エネルギーを消費するように全身的に作用しており、闘争または逃走のようなストレス状態に対する対応に適しています。

◉副交感神経

副交感神経の末端からはアセチルコリンが分泌され、標的器官に作用します。動眼神経中の副交感神経は、瞳孔括約筋を収縮させ、顔面神経の副交感神経は、涙腺の分泌を促進し、顎下腺と舌下腺から漿液性唾液の分泌を促進します。

交感神経とは逆に心臓の機能を抑制し、血圧を低下させ、呼吸器系に対しては抑制的に働き、気管支を収縮します。

一方、消化管の平滑筋を収縮させ、消化液の分泌を促進。また、下行結腸、S状結腸、直腸、膀胱を支配し、排尿や排便を促進します。

このように、副交感神経は消化・吸収機能を亢進させ、安静・休養状態でエネルギーを蓄積するように作用しています。

細胞周辺の内部環境は、外界の状況が変化しても、ある範囲内で一定に保たれており、これを恒常性の維持(ホメオスタシス)と言います。内臓には必ず交感神経と副交感神経の枝が張り巡らされており、それらは互いに拮抗しながら、代謝・体温・体液のバランスなどの調節をし、恒常性の維持のために重要な働きをするのです。

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Miki Shimamura

看護師、保健師

大学時代にミス日本受賞、品格を養うマナースクールASKAを主宰。美しさを纏うための知識を様々な角度から提供、美容家として内外美容をサポートしていた。 現在は、複数の企業・団体に保健領域のコンサルタントとして所属し、既存の資源を活用した共創型の事業創出を促進している。