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PART3.「学びながら働くこと。繋がりの大切さ」

大阪から関東へと拠点を変えた新田理恵さん。思うように動き出せない時期を乗り越えて、持ち前の行動力で道を切り開いていきます。新たな学びの場を得ることで理恵さんの人生がさらに大きく動き出していきます。

学びと私

理恵さんが今学ばれていることについてお聞かせください。

早稲田大学の大学院生として、時間栄養学という分野を学んでいます。

私たち人間はもちろん、全ての動植物は体内時計を持っています。その体内時計によって、何時頃に記憶力が最大化し、何時頃にどのホルモンが出るかなどがだいたい決まっています。

それを栄養学の視点から見ると、例えばトマトを食べるなら、栄養素のリコピンを吸収しやすいのは朝なので、朝に食べた方がより効果的に栄養素を摂取出来たりします。また、夜型の人が朝型に近づくためにはどのような食事の摂り方が効果的なのかなど、時間を味方につけるような栄養学なのです。

今の理恵さんは学びに重きを置いていらっしゃる、ということですね。

そうですね。平日の10時から19時くらいまでは学業優先で、その前後、朝早くか夜遅めか、土日に仕事をしている状況です。他のメンバーが頼もしくサポートしてくれているので、なんとか回せています。

働きながら新しい知識を積極的にアップデートしていくという機会はなかなかないと思うのですが、自ら見つけて学びに行く、という姿勢は本当にすごいと思います。

ありがとうございます。勉強が好きなのです。これからもずっと、学びには終わりがなくて面白いですし、ちゃんと学びを社会や他のみなさんに還元できるようにしていきたいです。


栄養学と経営学

大学院で他にも学ばれていることはありますか?

ビジネス系の授業も取っています。早稲田では起業のサポートもしてくれているので、学内で起業している人も多いです。学内ファウンドもありますし、他大学と共同のプログラムを行うことも多いですね。授業では共同プログラムについて、特定の地域に対して地域活性のプロジェクトを起案したり、大手企業と組んでテーマを元にアイデアを発想してみるなど、面白い授業が多かったです。そういった場で、法律や経営、心理、建築など、自分と違う専門性を持った学生と出会えることもあり、視点が違っておもしろいです。

様々なことに挑戦をされていますね。その原動力となるお気持ち、どうして挑戦をしようと考えてるのか、ということについてお聞かせください。

今、私は30代。この時期にしっかりとした基礎を自分の中に作ること、軸を深める、ということをやっておきたいです。専門性を高めて役割を見い出すことで、40代、50代にもっと高くジャンプ出来るのでは、というイメージがあります。

今は修行の時期だと思うので、しっかり未来のための地固めをしておきたいですね。


法人化と個人事業主の違いについて思うこと

ここからはお仕事のことについてお伺いします。

理恵さんは個人事業主として活動をされてきて、2016年に{tabel}を法人化されています。{tabel}では薬草茶を中心に関連商品なども販売されていますね。法人化のきっかけについてお聞かせください。

薬草茶などの食品を扱っていると、商品の裏側に生産者情報や販売者情報を書くことがあります。その時に個人事業主だと自分の名前と住所を書かなければならなくて、それはプライバシーの面ではどうなのかな、とずっと思っていました。また、個人名での表記だとどうしても規模の小さな事業だと受け取られてしまいがちで。会社名にすることで商品を買っていただくお客様や取引をしてくださる方にも安心感を得てもらえるのではないかと考えました。

大手の企業さんと契約をする際にPL保険という商品に関する保険を掛けることが必要になるのですが、それも契約のやりやすさなどを考慮すると法人化した方が楽だな、と感じる部分も多かったですね。

一般的には売上が年間1,000万円以上になると法人化した方が税金の面でメリットがあると言われているのですが、私の場合はそのラインを超える前に法人化に踏み切りました。

売上の規模にも変わってくるかと思いますが、ミニマムにやるのであれば個人事業主の方が経理は楽だと思います。法人だとどうしても複雑で、税理士などのプロにお任せする必要性が出てきますし、手間も費用もかかります。また会社化して従業員を雇うことで保険や年金の支払いも発生するので、その辺りはしっかり回せるチームを作らないと大変ですね。


{tabel}メンバーのこと

{tabel}チームのメンバーの方たちとはどのように出会われたのでしょうか。

初期の頃は活動をしていく中で友達が手伝ってくれる形で入ってきてくれていました。その後は私たちの活動に興味を持ってイベントに来てくださった方から、面白かったので手伝ってみたい、というお申し出を受けることもありました。

現在バックヤード業務を手伝ってくれているアルバイトの2人は、事業サポートサービスを利用してきていただいています。基本的なビジネススキルや面接は管理職の方がサポートしてくださるので、こちらの指示がスムーズに通るようになっています。

事業サポートを知るきっかけはどのようなものでしたか?

同じ起業家の友人に聞きました。このような起業家同士の繋がりのきっかけは、イベントや展示会に参加をしたり、友達に紹介してもらったりして始まることが多いです。

展示会へ参加をすることの主目的には、バイヤーさんに見てもらって実際の取引に繋げることですが、それだけではなくて、特に私の参加していた「ててて見本市」では横のつながり、「協同組合」の新しい形を模索していこう、というところがあったため、例えば出店している隣のブースの方が席を外している時にはチラシを渡したり軽く説明が出来るくらいに仲良くやりましょう、という温度感でやっていました。

そういったつながりから「こういう時はどうする?」という相談の出来る仲間が出来てとても救われました。他社と助け合うことで、{tabel}も独り立ちが出来る状況が少しずつできてきた気がします。


学びを発信するということ

{tabel}の事業に続き、2018年からは市民大学講座の「薬草大学NORM」も主宰されていますね。これはどのような事業なのでしょうか。

きっかけは日本各地を回って薬草のフィールドワークをしていた時に出来たいろいろな繋がりや、面白すぎる知恵を、私一人で持っていることが非常にもったいないと感じたことです。

また、私も薬草について学びたいと考えた時に、都会で学ぶ場がほとんどありませんでした。さらには、薬草そのものも手に入りにくい。そのような環境でも、薬草について皆さんで聞いたり話し合える場所が作れたらいいな、という思いで始めました。

東京と京都で100人規模のイベントなどを開催していました。

どのような方が参加されているのですか?

植物や自然に寄り添う暮らしや丁寧な暮らしに興味を持っている方もいらっしゃいますし、ハーブやスパイスが好き、と入って来られる方もおられます。日本のハーブを学びたい方は、年々増えてきていますね。